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No.022 西廣智一 (ナタリー):作品レビュー 横山健 -疾風勁草編- ドキュメンタリーフィルム

作品レビュー:No.022 西廣智一 (ナタリー)

10代、20代、30代、40代で感じ方が異なるのは当たり前だが、中でも横山と同世代の人間、しかも男性はこの映画を年に1度、じっくり観てみてはどうだろう。 by No.022 西廣智一 (ナタリー)

Hi-STANDARDのギター&ボーカル、BBQ CHICKENSのギタリスト、Ken Yokoyama(Ken Band)のボーカル&ギター、PIZZA OF DEATH RECORDSの代表取締役、そして2児の父。横山健は現在これだけの肩書きを持つ40代男性だ。そんな男性の日常に迫るドキュメンタリー映画、誰だって観たいと思うはず。1人のパンクロッカー、1人の社会を生きる40代男性、そして1人の父親。この映画で横山はさまざまな側面、さまざまな表情を見せながら、自身の生い立ちからギターに触れるきっかけ、そしてHi-STANDARD結成〜活動休止〜復活について赤裸々に語っている。と同時に、Ken Bandとしての日常(レコーディングや日々のライブ、ツアー中の一幕など)も明かされており、2009年から2012年にかけて横山が体験した激動の4年間も目にすることができる。

ロックドキュメンタリーとしてはこれほど魅力満点の作品はないだろう。が、僕が個人的に一番心をえぐられるように惹き付けられたのは、パンクロッカーとしての横山の側面ではなく、いち40代の男性としての生き方……その言動だった。横山と同世代ということもあるかもしれないが、彼が家族に対して思うこと、社会に対して感じること。そのすべてに共感できたとまでは言わないが、言わんとしてることは理解できた。実はこのポイント、昨年試写会や劇場で観た際にはそこまで強く惹き付けられたかというと、正直自信がない。1年前はもっとストレートに、パンクロッカー横山健の生き方そのものに魅力を感じていたかもしれない。

先日横山とMINORxU監督にインタビューした際、僕は2人に「この映画は観た年齢によって、感じ方や惹き付けられるポイントがどんどん変わっていく作品かもしれない」と伝えた。10代、20代、30代、40代で感じ方が異なるのは当たり前だが、中でも横山と同世代の人間、しかも男性はこの映画を年に1度、じっくり観てみてはどうだろう。男性としてもっとも脂が乗った10年間(と、自分は言い切りたい)、毎年この映画を通じて自分の中における心境の変化が如実に感じられることだろう……もしかしたら40代って、10代の頃よりも多感な時期なのかもな……なんて思ったりして。

最後に余談。横山と父親との関係について……自分の実体験と通ずる部分がかなり多かったこともあって、いろいろ考えさせられた。二度と会わないと決めていたけど、そのタイミングが来たら……どちらかが死ぬ前に一度、会っておいてもいいかな。この映画を観て、初めてそう考えるようになった。実はこれも今回DVD化された際に観て、改めて感じたことの1つ。人生、何がきっかけになるかわからないもんだな……。

by 西廣智一 (ナタリー)